母と手をつないだのは何十年ぶりだったのだろう・・
その細い手で働き育ててくれたその細い手を握ったまま もし自分に超能力があるならと念じ続けていた
が超能力は無かった 奇跡など起こる筈も無かった
心電図モニターの波形が小さくなりやがて医師が臨終を告げた時 まだかすかに波形が打っていた
いやまだですよ とこの場に及んで食い下がっても仕方のないのだが 医師に言うと これは洞結節が電気信号を出しているだけで心臓は止まっています御臨終です と 

その日まで元気で デパートでお歳暮を送って デパ地下で御寿司を買って来て 食事の後倒れた
処置室で数十分 私は別室で待機させられた 窓の外は土砂降りになっていた
やがて呼び出されて医師の説明 大動脈が大きく剥がれて手術をしても助かる可能性は高齢である事もあって極めて低い 助かったとしても血圧が低い状態が続いたので障害が残る可能性が高い どうしてもと言うなら医師を集めて手術をしますが・・・と

やれるだけやるのが良いのか 体を切り刻む事無くこのままか 苦渋の決断を迫られた
そこでかすかに頭をよぎったのは母の口癖だった「ピンピンコロリ」という言葉
結局私は手術はしない事を選んだ

この季節になると昨日の事の様に思えるが あれから早12年 13回忌 助かっていれば97歳 あの時の判断が正しかったのか否かその事はいつまでも胸を離れない

洞結節という細胞が出す最期のあのかすかな信号は何を言いたかったのだろう

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買い物に行っているよな小春かな