7月21日はいつも旅立ちの日 だった
高校1年の時はキャンプ用品を積んで伊豆半島一周
高校2年の時はYHを転々と泊まり歩いて熊本の祖父の家までのロングツーリング

夏休みに入ったら成績表はさておいてすぐに旅立ち家出をする 
ちょっとくらい成績が悪くても元気で無事なら良いか・・と親に思わせる作戦であるw

アポロ11号が月面に着陸したテレビ中継を宇野港から土庄行きのフェリーの中で見ていた
そういう時代の話
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成績表が関係無くなった歳の7月21日 祖父危篤の報があり急遽両親は飛行機で熊本へ 私は新幹線で終点岡山まで そこから特急急行鈍行を乗り継いで熊本の田舎の駅に降り立った
担いで来た自転車を組み立ててヒグラシとカジカの大合唱の中 真っ暗な田圃の道をひ走って夜半に辿り着いた祖父の家は開け放って煌煌と電球の光が外に漏れていた 
時すでに遅し
近所の人が集まって炊き出し 思い出話で酒を酌み交わしながらの通夜の最中だった


葬式が終わり初七日が過ぎて親戚も帰り やる事も無くなって私もふらり旅に出た
川内港からのフェリー 見上げたデッキには楽しそうな女学生が髪をなびかせ その脇にはビニールを掛けた葬式の花輪が風にはためいていた 歓びも悲しみも皆この船で運ぶのか・・

里港に着き 小さなプレハブの観光案内所でもらったパンフレットには「もう一度地図を見直してください!」と書いてあった
甑島は九州の地図などで左下の凡例のスペースで消されてしまう事が多いのだとか
結局観光客はディスカバージャパンの女学生と私とほんの数人
皆すぐにどこかに消えてしまった

イカ襖の連なる低い防波堤の前の民宿に宿を確保してからパンフレットにあった天橋立より長いというナマコ池を見に出掛けた
尾根の道を走っていたらトンボの大群に遭遇 除け切れないほどの無数のトンボがスポークにカシャカシャと当たった
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民宿の夜中 ふと目を覚ませば枕元になにやら気配が・・ 目を瞑ると見えず開けると見える
それはきっと祖父だったのかもしれない 
遠い遠い夏の日